マネーコラム
〔第19回〕
  イザというときに焦らないための相続の基本知識
 
●自分に相続は関係ない?!
 

 皆さんは「相続」について、どのようなイメージを持たれていますか?
―私の両親(或いは、妻や夫)は健康そのもの。相続なんてまだまだ先の話…。
そんな風に思われる方も多いかもしれません。

 日本人の平均寿命は、男性79歳、女性は86歳、世界一の長寿大国ですから、確かに相続は遠い先の話のように思えます。しかし、人間はいつか必ず死を迎えるもの。相続は、誰もがいつかは関わることなのです。

 大切な人が亡くなると、悲しむ間もなく葬儀の準備に追われることになります。それと同時に、決められたタイムスケジュールに則って相続に関する手続きを行わなければいけません。期限までに必要な申告を行わないと、税制優遇措置を受けることができなくなり、税金を多く払うことになってしまいます。

 イザという時に焦らないためにも、相続に関する基礎知識を身につけておくことは大切といえます。

<主な相続税申告・納付までのタイムスケジュール>
<主な相続税申告・納付までのタイムスケジュール>


●日本における相続の現実は

 次のグラフは、相続税の申告実績の推移です。例えば、平成16年に死亡した人の数は193,675人。一方、相続税の課税対象となった人の数は12,478人。相続税を支払った人の割合は6.4%ですから、日本においては相続税を支払う人はそれ程多くないことがわかります。

相続税の申告実績
出所:国税局「相続税の平成15・16年分申告事績及び平成16事務年度調査事績について」

 次に、下のグラフを見てみましょう。日本の場合、相続財産の50%以上を土地や家屋などの不動産が占めています。実際に、「金融資産はほとんどないが、家屋や土地は持っている」という方は多いと思います。

相続税の申告実績
出所:国税局「相続税の平成15・16年分申告事績及び平成16事務年度調査事績について」

 不動産は、預貯金や株式と違って分割するのが難しい財産です。相続財産に占める不動産の割合が高いと、たとえ相続税の支払い対象とならない場合でも、遺産分割でトラブルになってしまうケースもあるのです。

 そのため、相続が「争続」にならないように、
  • 日頃からきちんと財産管理をしておくこと
  • スムーズな遺産分割ができるよう事前に親族で話し合いをしておくことが大切です。
  
●イザという時に焦らないように相続の基本の基本を知っておこう!) 

(1)相続とは?相続税とは?

 亡くなった人の財産や権利を引継ぐことを「相続」と言います。その際、亡くなった人のことを「被相続人」、亡くなった人の財産や権利を引継ぐ人のことを「相続人」と呼びます。そして、相続人が被相続人の財産や権利を引継ぐ際にかかるのが「相続税」です。

(2)相続税の対象となる財産は?借金も相続するの?

 相続税の対象となるのは、被相続人が所有していた不動産、預貯金、株や債券などお金に換金できるあらゆる財産です。また、生命保険金や退職手当金は、被相続人が亡くなった後に支払われますが、「みなし相続財産」として、相続税の対象となります。

 一方、被相続人に借入れ(借金)があった場合、こうしたマイナスの財産も相続財産としてカウントされます。マイナスの財産がプラスの財産よりも多い場合、相続人は自分の財産で債務を返済しなければならないのでしょうか?

 この場合、「相続放棄」や「限定承認」という方法をとることにより、自分の財産で債務(借金)を返済する必要がなくなります。いずれの場合も相続開始から3ヶ月以内に手続きをする必要があります。

(3)相続人になれるのは誰?

 相続人には誰でもなることが出来ます。遺言書により相続人や相続割合を決めることも一般的に行われています。一方、民法では、「法定相続人」を定めています。法定相続人の範囲と優先順位、法定相続分は、次のように決められています。

 まず、被相続人の配偶者は常に相続人となります。そして、配偶者以外は

第1順位:被相続人の子(直系卑属) この場合の法定相続分は、配偶者1/2、子供1/2
第2順位:被相続人の父母(直系尊属) この場合の法定相続分は、配偶者2/3、父母1/3
第3順位:被相続人の兄弟姉妹 この場合の法定相続分は、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

の順で、優先順位の高い相続人のみが相続人となります。

 例えば、妻と子供のいる人が死亡した場合、その両親や兄弟姉妹が健在であっても、相続人となるのは妻(配偶者)と子のみになります。

 なお、配偶者がいない場合には、優先順位の高い相続人が全財産を相続します。また、同順位の者が複数名いる場合には、各自の相続分は均等となります。

<相続人の範囲について><相続人の範囲について>

【相続人が被相続人より先に死亡していたら?】
 この場合、相続人の子供が相続人となり、これを「代襲相続」と呼びます。例えば、被相続人の子が相続時に亡くなっていた場合、その子供(被相続人の孫)がいれば法定相続人となります。

【遺言書に法定相続人の相続分がなかったら?】
 民法には「遺留分」という制度が存在します。法定相続人に一定割合の相続財産を保障するものです。例えば、配偶者と子供が法定相続人の場合、それぞれ相続財産の1/4ずつが遺留分となります。

(4)相続財産がいくらあると相続税がかかる?

 相続税は、相続財産から「基礎控除額」を差し引いた金額に対して課されます。
基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」で計算します。

 例えば、法定相続人が妻と子供2人の合計3人の場合、基礎控除額は8,000万円となるので、相続財産が8,000万円を超えると相続税がかかります(財産内容や控除次第で)。

(5)どんな場合に相続税の申告が必要?

 相続税の申告及び納付は、被相続人が死亡した日の翌日から10ヶ月以内に行います。相続税がかからない場合(納税額0円の場合)には、相続税の申告をする必要がありません。但し、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の評価減」などの特例を利用して相続税がゼロとなる場合には、申告が必要です。

 

 
●最後に…

 相続の実際の手続きは非常に複雑です。そのため、必要に応じて、専門家を上手に活用してみるのもよいでしょう。人がこの世に残す最後の財産で、トラブルや問題を起さないためにも…。

 
 
 
2006年10月
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)
杉田ゆみか
 
 
 
執筆者プロフィール 杉田ゆみか 
FPハウス スターバレリーナ  (www.starballerina.com/)。CFP®、中央大学大学院国際会計研究科修士課程(ファイナンス)修了。大手生命保険会社、ソフトウェアハウスを経て2003年独立。
生命保険会社で得た実践的な知識に加え、大学院で学んだファイナンス理論をわかりやすく解説。お客さまが感動する提案書作りを心掛ける。
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